Vol.026 - 「生理がある=妊娠できる」じゃない 妊娠・出産・流産の経験 歳を重ねながら感じる身体の変化
ミノ フェムテック・フェムケア情報WEBメディア「Ly:set」スタッフ
初経:小学6年生(12歳)
現在の平均生理日数:7日
現在の平均生理周期:28日
現在使っているサニタリーグッズ:月経カップ(murmo)、吸水ショーツ、布ナプキン
- 生理はどんな日?
よろこび
- 生理と聞いて浮かぶイメージは?
子ども
- ここから、生理を軸にご自身の半生をふりかえっていきたいと思います。初経はいつですか?どんな風に覚えていますか?
初経は小学6年生のとき、12歳でした。
生理が始まる少し前から下着にドロッとしてビヨーンと伸びる粘度の高いおりものがつくようになり、このときはおりものの存在を知らなかったので「何かの病気なんじゃないか」と本気で怯えていました。当時、我が家では性的な話題がタブー視されていて、テレビドラマでさえも“そういうシーン”になると家族で目をそらすような空気。そんな中で、この身体の変化を誰かに相談するなんて考えられませんでした。
図鑑や漫画で卵子や精子の存在は知っていたし、親に得意げに説明することもあったのに、それが自分の身体でどう起こるのか、現実として理解していなかったんですね。
「もしかして、自分は男なのかも」「これって射精…?」なんて混乱もありました。
でも実際に生理が始まると、さすがに母に伝えました。するとお赤飯を炊いてくれて、「おめでとう」と言われたけれど、正直その意味はよくわかっていませんでした。ただ、何か“特別なこと”が起こったんだという感覚はありました。
中学生になって変化はありましたか?
小学校~中学時代は、今思えば比較的穏やかな時期だったと思います。生理は定期的に来ていたし、特に大きな痛みや不調もなく、淡々とやってきては過ぎていくもの、という認識でした。
周囲では生理の話題はタブーに近く、友達同士でもオープンに話すような空気はなかったように感じます。だから、ナプキンを持ってトイレに行く子の姿をちらっと見て、「あ、あの子も始まったんだな」なんて、密かに察し合うような時代でした。中学校になると友人の初体験の話や、性被害の話も耳にするようになり、セックスは意外と身近に耳にする状況でした。
高校生になると、生理との関係はどのように変わりましたか?
高校に入ると、急に生理がつらくなりました。
何よりも、生理痛が酷くなっていったんです。お腹が重く、鈍い痛みが続き、ついには布団の中で泣くほどの激痛に変わっていきました。見かねた父が「薬を飲みなさい」と声をかけてくれたのですが、当時のわたしはなぜか“薬に頼ること=悪いこと”のように感じていて、なかなか素直に受け入れることができませんでした。
それは、自然に逆らうような行為だという思い込みや、身体は自分の力でなんとかすべき、という価値観の影響だったのかもしれません。
さらに、もうひとつ悩まされたのが眠気。特に生理前になると異常なまでの眠気に襲われ、授業中、教室の一番前の席にいても眠ってしまうことがありました。
「わたしって、こんなに眠くなる人間だったっけ?」と自分でも不思議に思っていましたが、その原因がホルモンによるものだと気づくのは、もっと後になってからのことでした。
大学生活ではどんなふうに生理と向き合っていましたか?
大学生になると、少しずつ生活に自由が出てきました。朝の早起きや満員電車のストレスから解放され、自分のペースで授業に出たり休んだりできる。そのおかげか、生理痛や眠気のつらさを自分のタイミングでコントロールしやすくなって、少しだけ楽になった実感がありました。
ただ、生理前の眠気はやっぱり強くて、午前の授業がない日は午後までずっと寝ていることも。母に起こされても怒ってしまったり、起こされたことすら覚えていなかったり。自分でもどうにもならないような、人格が変わったような感覚に支配されていた時期です。
この頃「わたしの身体って、もしかしたら普通じゃないのかもしれない」と感じていました。
社会人になってから、生理との関係はどのように変わりましたか?
大学を卒業して、IT系の会社に就職しました。今のように「ホワイト企業」や「働き方改革」という言葉もなかった時代で、朝早く出社して終電で帰る生活が当たり前でした。
そんな生活が続く中で、ある時から体に異変が現れます。
月の半分、体温が38℃前後まで上がる。でも風邪のような症状はなく、仕事も普通にこなせてしまう。体温だけが高い、奇妙な日々が半年近く続きました。さすがに不安になって内科を受診すると、「これは不明熱、白血病の可能性もある」と言われました。けれど、検査の結果は異常なし。
その後、自分で調べたり婦人科を受診したりする中で、やっとたどり着いたのがPMDD(月経前不快気分障害)という診断でした。
当時は今ほど知られておらず、対応してくれる婦人科もとても限られていてクリニックにたどり着くのにもかなりの苦労がありました。
PMDDと診断されて、どのように感じましたか?
ようやく辿り着いた婦人科クリニックで「PMDDでしょうね」と言われた時、驚きというよりも、むしろ「やっと理由がわかった」という安堵感がありました。でも、その治療法は抗うつ剤。少しずつ量を増やしていき、半年かけて体に慣れさせる。そしてやめる時も、また半年かけて減らしていく。
副作用は重く、飲み忘れただけでふらつき、階段が怖くなったり、自分が自分じゃなくなるような感覚に襲われたりすることもありました。気分の落ち込みは強く、「死にたい」と思ってしまう日すらあった。ただ、服薬を始めてからは、感情の波が少しずつ穏やかになっていきました。と同時に、「これが“普通”なのかもしれない」と初めて気づくような感覚でもありました。
その後の治療やライフスタイルに変化はありましたか?
ある日、会社の先輩(50代の女性)が「ピルを飲んでいるよ」と教えてくれたことをきっかけに、低容量ピルの処方を受け始めました。でも、そこでも副作用に悩まされました。
朝起きると足が異様に痛い。歩けない。血栓症かもしれないと知ったのは、後になってからのことでした。「血栓症が起きている症状なのですぐ服用をやめて」と言われたときには、すでに3回も同じ症状を繰り返していて、今思えば、かなり危険な状態だったのかもしれません。
結局ピルはやめて、その後に始めたのが漢方とヨガでした。ヨガは2012年からずっと続けていて、気づけば10年以上。同じスタジオに通い続け、自分と向き合う時間を持つことで、身体と心の両方が整っていったように思います。
出産や子育てを経験して、生理への考え方に変化はありましたか?
30歳で、それまで働いていた“ブラック”な会社を辞めました。理由は、働き方を変えるためです。しかしその後に就職した会社も結局激務が続いたので、第一子の妊娠を機に退職しました。妊娠・出産は決してスムーズではありませんでした。切迫早産になったり、赤ちゃんの回旋異常で難産だったり。でも、不思議と出産そのものは前向きに乗り越えられた感覚があります。
出産して育児に専念したのですが、夫は仕事が忙しくほとんど家にいない状態だったため、ワンオペで本当につらかったです。その後、再就職して育児と仕事を両立する暮らしになりました。
第一子出産後、2年弱で第二子を出産しました。それから2年弱経って再び妊娠するのですが、このときはじめて稽留流産しました。子宮内で赤ちゃんが亡くなっている状態です。排出をする手術の予定も決まっていたのですが、その前日職場にいるときに 、突然ドバーッと自然と出てきてしまい、慌ててトイレに行って、自分の手で受け止めました。会社を早退して病院へ行きましたが、すべて出ていたので手術は不要となり、その後生理も戻ってきました。
その後、それから2回目の稽留流産を経験しました。このときは前回のようにならないように早めに手術をしました。手術後に初めて訪れた生理は、自然と排出された前回とは異なり、激しい痛みを伴うつらいものでした。
「生理がある=妊娠できる」と思っていた自分にとって、流産はとてもショックでした。出産できないという現実、生理があるのに子どもが育たないという事実に、頭ではわかっていても、心がついていかない。それでも、少しずつ「これは自然の流れなんだ」と受け止めていくしかありませんでした。
-今、生理とどんなふうに向き合っていますか?
40代に入り、ホルモンの変化をはっきりと感じるようになりました。それまで37.2℃くらいだった平熱が、ある日突然36.5℃くらいまで下がったんです。それをきっかけに、生理痛や眠気も以前ほどではなくなっていきました。
今は、月経カップや吸水ショーツ、布ナプキンを使って、生理の日々を穏やかに過ごせています。
-生理をふりかえって、いま何を思いますか?
PMSの症状がひどかった頃、私は生理が来ることを心から「ありがとう」と思っていました。
月経前の2週間は、発熱・イライラ・うつ状態に苦しみ、「もうだめかもしれない」と思う日もありました。でも、生理が始まると、その苦しさが嘘のように消える。お腹は痛いけど、気分は晴れやかで、「やっと来てくれた」「ようやく自分を取り戻せる」と思える、そんな存在だったんです。だからわたしは、生理が嫌いじゃない。むしろ、気持ち的には生理が一番楽だった。
今は量も減ってきて、生理周期も短くなり、閉経が近づいていることを感じています。
同時に、「もう子どもを産めないんだな」という実感がふと胸をよぎることもあります。それは少し切ないけれど、これまでのすべての経験があって、今のわたしがいる。そう思えるから、穏やかに受け止めています。
注釈:「わたしの生理」では、いろんな世代・環境の方が、生理とどのように向き合って暮らしてきたのか記録し共有することで、隠されがちな生理を考えて話すきっかけにしたいと取り組んでいます。特定の商品やサービスまたは対処法を推奨するものではありません。掲載されている内容はその方個人の体験ですので、気になる症状がある際はご自身で医療機関にご相談ください。
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